いろいろあるのも、いいことなんだ


昨日、広島市内で開かれたLRT都市サミット2009に行ってきました。
お目当ては関口知宏さんの講演です。
NHKの番組でファンになったので生で見られるチャンス!ということで楽しみにしていました。
内容はとても面白く、また関口さんの魅力的な内面を十分に知ることができ、
自分の考えとシンクロする部分もあり、充実した時間を過ごすことができました。


今日はその内容をご紹介します。

目次
  • 関口知宏さんとは
  • 旅を始める前の自分
  • 自然体でできたわけ
  • 世界から日本を眺めて
  • いろいろでいいじゃない
  • これからの自分

関口知宏さんとは

関口知宏 - Wikipedia
俳優さんでもあり、絵や音楽に造詣が深いことでも知られています。
本当に多趣味で引き出しの多い方です。


NHKの番組「列島縦断 鉄道12000キロの旅 〜最長片道切符でゆく42日〜」で最長片道切符の列車旅行に挑戦。
その後、JRの全線走破・ヨーロッパ鉄道の旅・中国での鉄道一筆書きの旅など、たくさんの鉄道旅行番組に出演されました。
いまはNHK BS1関口知宏のファーストジャパニーズで活躍中です。

旅を始める前の自分

驚いたのは、最長片道切符の旅の仕事が入る前に、関口さんが芸能界をやめようと思っていた、といわれたことでした。

ある番組で、芸人さんが人の悪口を言って笑いを取っていた。
自分はそれが気に入らなかったので不満そうな顔をした。
別の芸人さんは芸で笑わせた。面白かった。
その放送をみると、自分が悪口の芸で笑っているように編集されていた。


テレビ番組で「本音」というと、悪いこと・ネガティブなことしか言ってはいけない空気がある。
純粋なことをいうと浮いてしまう。
なんにでも笑いに変えようとするところ、事実を捻じ曲げて放送するところが気に入らなかった。


まじめに自分の本心に忠実に生きたかった。だから芸能界をやめようと思った。

テレビの世界では「番組を面白くするために」事実を誇張したりするのが普通の感覚なのかと思っていましたが、
芸能界にもそれに違和感を持つ人がいることに驚き、また安心しました。
芸能界に入る人も普通の人なんだと。


なんにでも笑いに変えようとするからテレビが面白くないと感じるのかもしれない。
本気の番組を見たい、純粋な気持ちで見られるものが見たい、というニーズは多いように思います。

芸能界をやめて、旅に出ようと思っていた。
ちょうどそのタイミングでNHKから番組の出演依頼が来た。
なぜ自分なのかわからないが、その時点で本当にやりたかったことだった。運命と感じた。

私も実感としてあるのですが、自分の行く先を悩み、とことんまで落ち込んだときって
不思議と救いの道が見つかるものです。
自分の心が無になって、すっと急に視界が開ける瞬間があります。
私にとっては、IETF参加がそのきっかけになりました。(海外出張で翼が生えた - めざせ!へなちょこ脱出
関口さんもそれを体験されたのか、ととても共感しました。

自然体でできたわけ

番組を放送している間に多くの手紙が届いた。
そのほとんどに書いてあった言葉が
「一緒に旅した気分になりました」「癒されました」「自然体」という言葉。
自然体は自分でやろうとしてできるものではない。
本当に旅をしようと思っていて、本心でやった仕事だったから自然体になることができた。


特に鉄道が好きなわけではなかった。でも逆にそれがよかった。
鉄道が好きだったら鉄道しか見えていなかったと思うが、普通に乗っていたから人との出会いを大切にすることができた。


最長片道切符の旅は57日間の期限があるとても難しい旅。
宮脇俊三さん(宮脇俊三 - Wikipedia)も達成することができなかった。
番組では何百人というスタッフが支えてくれていたから達成ができた。
自分ひとりの力ではない。だから全然自慢する気にもならなかった。

あの番組が楽しかった理由がわかった気がしました。
本当に自然体で、その地の一人一人のよさが伝わってくる内容でした。
本心で仕事をするってどういうことだろう。
まだ私は自分の本心がなにか見えていない気がします。

世界から日本を眺めて

2007年には中国の旅をした。
出発前は毒入り餃子事件や、ダンボール肉まんなどの報道があふれ、日本人の中国に対する見方は良くなかった。
しかし旅を終えて帰国してみると周りの人の反応が変わっていた。
番組を通して、中国人の一人一人はいい人だということが伝わったから。
国家単位で見れば怖く見えるが、個人単位で小さく見ればそうでもない。


自分はただ俳優という肩書きがあるだけの普通の人。
中国に対する見方を変えることなんて、昔なら遣唐使が命がけで行っていた仕事だ。
いまはテレビや技術の力で、自分のような一個人ができるようになった。
世界はグローバル化しているといわれているが、見方によっては一個人の影響力が強くなったといえる。

これは外国とのことに関わらず、なんにでもいえることかも。
ネットの力で、いままでマスコミでしかできなかった情報発信という仕事が、
個人でもできるようになってきました。
逆に個人の責任範囲も大きくなってきたという見方もあるでしょう。

外国に行って、日本がすごいと知ることができた。
どの国にもおいしいものがあるが、それ1つしかない。インドならカレーばかり。
日本の食べ物、飲み物の豊富さは外国と比べてすばらしい。
世界一いろいろな国が日本。


宗教などで戦争をしている国もある。その人たちは頼るものがひとつしかないから、それを守るために戦っている。
日本人から見ると、大した違いはないようにしか見えないのに。
価値観が1つしかないか、たくさんあるかの違い。


日本人は気づいていないが、無意識のうちに国際化している。
食べ物も考えも世界中から取り寄せて取り込んでいる。
日本は世界から来るものを否定しない、という良さがある。

海外に行くと、日本のいいところが見えてくるというのは本当ですね。
食べ物のことが例に挙げられていましたが、考えも技術も、取り込んで自分たち流にアレンジする、
そこは日本の良いところだと思います。
もっと日本人は自分たちに自信を持ったほうがいい。
そして自分たちの考えを自覚したほうがいいと思いました。

いろいろでいいじゃない

旅をして、人生の目標が変わった。
それまでは何かのプロ・専門家にならないといけないと思っていた。
でもいろいろできることもすばらしい。
何かのプロになるのではなく、広くいろいろなものに取り組んでいきたい。


(黒人の歌、子供の歌、女性の歌を聴かせて)これは全部、自分が歌ったもの。
録音レベルを変えてそれぞれの声を作り出している。
方法を変えることで、いろんな自分になることができる。
自分が気づかなかったことができるようになる。
絵もあんなにかけるようになるとは思わなかった。


いろいろなことに触れる喜び!
みんなそれぞれ、いろいろだから楽しい。

私も自分にこれといった技術がないことに悩んでいました。
いろいろ興味をもってやってみるものの、広く浅くにしかならない。
でも関口さんの言葉にハッとさせられました。


専門家ばかりじゃなくて、いろいろできる人がいることも大切なんですよね。
そして見方・やり方で自分をいくらでも変えることができるということ。
とても大事なことだと思いました。


広く浅くでもいいから穴を掘っていこう。
そしてこれだというものが見つかったら、深く掘っていこう。
そう決めたら、気分が明るくなりました。

これからの自分

いま日本で起こっている問題は1つの視点でしか見ずに突き進んできたからだと思う。
経済成長の時代には経済しか見ていなかったから、環境の問題が起こってきた。
いろいろな視点でみていくと、解決の鍵が見つかるのでは。
日本人ができることはそこだと思う。


また新しく旅に出る。今度は日本の旅。
新番組では日本で地域振興をやっている人たちに会いに行く。
第一回は尾道

私もできる限りいろいろな視点で見るように心がけているので
他の人とは違った視点で意見が言える自信が少しあります。
でもまだまだ足りない部分も。
もっといろいろな視点に立てるように考えを深め、
多くの情報をインプット・アウトプットすることを心がけていきたいです。


この講演で、関口さんの内面がとてもよくわかり
旅を通してとても人間的に奥深い人になられたなあと尊敬しました。
鉄道に乗っている時間に自分と向き合えたことが大きかったのかな。
自分との対話、必要ですね。実践していこう。


新番組は尾道ということで、今から楽しみです!