※ 辛口です
- 作者: 本多勝一
- 出版社/メーカー: 朝日新聞出版
- 発売日: 1982/01/14
- メディア: 文庫
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工業製品としての文章、つまり大量生産される新聞あるいは雑誌に載せる文章であればこの本に記載されている書き方が参考になるでしょう。
しかし、そういう一つの価値観の元に「悪文」を一刀両断に切ってしまう所に不満を感じました。
なぜその書き方がダメなのか?
私は自分の文章の課題だと思っているのは以下の点です。
- 句読点の打ち方(特に句点が多くなりがち)
- 「〜が、〜だ」を多用してしまう
- 文末が「思っている」で終わることが多い
しかしその課題を克服するための答えもヒントも、残念ながらこの本からは得られませんでした。
句点の打ち方については、具体的な説明が書かれていましたが、
なぜそういう打ち方をしなければならないのかという根拠は明示されていません。
慣習的・常識的なものだというのです。
「〜が」については、「読者がここで思考の流れを一瞬乱される。」という曖昧な根拠が述べられていますが
一方で「もし意味がわかりやすいのであれば、いくらでもつないでいけばいいだろう。」とも書いてある。
いったいどちらなのでしょうか。
結局、どう書くかは本人の常識で考えろということであり、何の参考にもなりませんでした。
私はこの本に載っている「悪文」が悪文とは思えませんでした。
一般人が書いた投稿記事に「ヘドが出そうな文章」「紋切り型の手垢のついた表現」と酷評していますが、
私にとっては筆者の文章もあまり違いを感じませんでした。
むしろ紋切り型の表現であっても、その中に本人の個性が光っていれば私は立派な文章だと思います。
文章の体裁は大事です。
しかし、体裁だけで中身のない文章を書いても意味がないと思います。
筆者は新聞記者としての経験をもとに、分かりやすい文章について深く考えられているのだということは伝わってきましたが、
述べられているのは、あくまでも「新聞」あるいはそれに近いものを書くための作文技術です。
固定の価値観に従わせようという意図があるのでは?と感じ、興ざめしてしまいました。