じっくり深く集中する大人になりたい - 「大局観」を読んで

私が小さい頃、土曜の朝に将棋の番組を見るのが習慣になっていました。父親は将棋が好きだったので、欠かさず見ていたのです。私は「何が面白いのかなあ〜」と思いながら一緒に見ていました。将棋のルールを教えてもらい、父親と一緒に指したこともありますが、将棋より「へこまわし」のほうが好きでしたね。

将棋の奥深さを知らない子どもでしたが、テレビ番組で大人が真剣に対局しているのを見るのは楽しかったです。真剣に考えていてすごい〜という程度でしたが。格好いいなあと思っていました。何手も先を読み、熟考して決断する。そういう大人に憧れていました。

書店で羽生善治さんの著書が目に入ったときに、子どもの頃に抱いていた憧れを思い出しました。

将棋を通して、人生哲学が語られています。文章から、驕らず誠実な人柄が透けて見えるようでした。

(要点を抜粋して掲載)
集中することは海に潜る感覚に似ている。少しずつ海底に向かっていく。深く潜るには助走が必要だ。

可視化が難しいテーマの処理には深い集中が必要とされる。深く集中できる状況でしか理解できないのだ。

集中を潜水のイメージで捉えるというのは、私にはとてもわかりやすい表現でした。時間を掛けてじっくり深いところまで降りていく、という感覚をもって集中してみると心が落ち着き、とても深いところまで到達できそうです。

また、深く集中できる状況でしか可視化が難しいテーマは理解できない、という指摘に膝を打ちました。

ネットで繰り広げられる議論や意見交換を見るたびに、なぜ深く考えることができないのだろうか?と感じていました。「速さ」に執着するあまり、集中して物事を考えにくくなっているからかもしれません。速さが求められている時代ですが、深さもまた大切にしたいです。

スピードをつけて変化に対応するのも大切だが、それをきちんと後世に伝えていくことも同じくらいに大切だ。

老成する、とはこういうことなのかと感じる一言でした。

本書のタイトルである「大局観」についてはあまり触れられていませんが、羽生さんの考え方を基に、深く考えさせられる本でした。さらに評判が良いこの本も読んでみたいです。

決断力 (角川oneテーマ21)

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