ライフハックはうさんくさい?−「モモ」を読んで

最近ライフハックという言葉がもてはやされていますね。
私も自己啓発が好きで、ライフハックにもいろいろと助けられている一人。
あちこちで「生活を効率良く」する術を仕入れては、試しています。


でも一方で自己啓発は怪しい、ライフハックなんてうさんくさい、という声があります。
そんなときにミヒャエル・エンデの名作「モモ」と出会いました。


モモ (岩波少年文庫(127))

モモ (岩波少年文庫(127))


どこから現れたのかわからないけれど、不思議な魅力のあるモモ。
モモとその友達との間にゆったりとした時間が流れています。
時間貯蓄銀行の「灰色の男たち」が、人間の時間を盗もうとやってきます。
時間を盗まれ、心 を亡くしてただただ忙しく働くだけの大人たち。取り残された子供。
モモはどうやって灰色の男たちを追い払うことができるのでしょうか?


この本が出版されたのは1973年。
コンピュータが発達しだし、人々の生活がそれまでの牧歌的なものから
効率を重視した成果主義へ切り替わっていく途上の時代です。
あとがきには、この本で出てくる「灰色の男たち」は効率を追求する人たちをモチーフに書かれており、
効率化はよくない!というメッセージが込められている作品である、と記述されていました。


モモに登場する「灰色の人間たち」は、人間たちと闇取引をします。
生活を効率化して徹底的に無駄を省かせ、その時間を盗んでしまいます。
灰色の男たちから時間を奪われた人間たちは、
「時間節約こそ幸福への道!」「きみの生活を豊かにするために−時間を節約しよう!」
という標語の元、どんどん無駄をはぶきます。
やらないといけないことに急かされて生きていきます。
そして社会は無駄はないけれども、面白味もない世界になっていきます。


確かに効率や成果のみを重視する世界は人間味がないものです。
そういう見方をすれば、ライフハックなどに興じることは馬鹿げている、となるのも頷けます。
しかし、私は単に「効率化=悪」という括りでは捉えたくありません。


時間を節約することが本当に悪なんでしょうか?
時間を節約して幸せになった人もいます。
私も便利な機器で時間を節約し、その分心豊かな生活を送れています。
節約すること自体が悪いわけではなさそうです。


時間を盗まれた人間たちは灰色の男たちにそそのかされて「なぜ時間の節約をしないといけないのか」わからないまま
必死に時間を節約していました。
つまり、手段と目的が摩り替わってしまったのです。
その結果、自分の心と人生を見失ってしまいました。


私たちも、「こうすれば成功できる!」という言葉に乗せられて
あるいはライフハックが流行っているからというだけで
目的が何かわからないまま、やらないといけないと思ってはいませんか?
自分にとってどうなりたいのか、具体的な目的をもち、
ライフハックはそれを実現するための手段であると考えれば、
流されることなく、自信を持って自分の道を進んでゆけるのではないでしょうか。