良かったことだけを書くだけではうつから抜け出せない


「成功する人の習慣」という内容の特集や本をよく見かけます。
書いてある内容はたいていこのようなものです。

  • その日の良かったことをあげていこう。
  • 自分はツイてる!と口に出そう。
  • 生きていることに感謝!
  • 常にありがとうございますと口にしよう。

これってポジティブだし、こういう明るい人は一緒にいて元気がもらえますよね。
私もそう思います。


でも私が気になったのはこういう文章です。
「物事をポジティブにとらえることはうつの改善にも役立ちます。」
ハッキリいって、ポジティブにとらえることはうつの改善には役立ちません。
むしろ逆効果です。

うつの人の考え方

うつを煩っている立場からすると、「物事をポジティブに捉えよ」という言葉はとてもきつい言葉です。
うつのときは物事を悪くしか捉えられません。


良かったと考えられない自分はなんてダメなんだ。
いつまでたってもポジティブ思考になれないバカなやつ。
他の人はできるのに私にはできない。
いつまでたってもできるようになるわけがない。
こんな自分なんて他の人に迷惑をかけている存在でしかない。
私なんてまったく必要とされていない人間。
この世から消えていなくなりたい。


こう考えてしまうのがうつです。
暗いでしょう?
「もっと明るく行こうよ!」そういう一言がまたうつを悪化させます。
そういう病気なんです。

認知療法と物事をポジティブに捉えることとは別物

うつなどの精神疾患を持つ人は、
自分の考えを紙に書き出すことで症状が改善されることがあります。
それはいわゆる認知療法と呼ばれるものです。
物事をポジティブに捉えることと、認知療法は全く別物です。


どんなにどす黒い考えでもいいからとにかく書き出すことが重要なのです。
こんなことを考えている自分はなんてダメなんだという考えがよぎりますが、
気にせずにそれも書き続けるのです。
「私なんてダメなやつだ。消えてしまえ。死んでしまえ。」と書くのです。


書いているうちに、その気持ちを客観的に見ることができる瞬間が訪れます。
あれ、これってこうも考えられるよな。
なんで自分だけだめで他の人はできると決めつけているんだろう?
そもそも人生が終わるような事なんだろうか?
その瞬間が「認知のゆがみに気づいた瞬間」です。


認知のゆがみが分かるようになると、一つの物事に対して複数の見方ができるようになります。
健康なときはそれはさほど難しくないことかもしれません。
しかし、うつ病はそれすらできなくなる病気です。
一人でがんばらずに紙の力を借りましょう。

ポジティブに考えることがいいわけではない

こう考えると、なんでもポジティブに捉えようと無理矢理強制することは
あまり心にいいことだとは思えません。
むしろ、ポジティブに考えられない、どす黒い気持ちを持つ自分を知ることのほうが重要です。
一番大切なのは「自分がどう考えているか」であり、ポジティブかネガティブかは重要ではないのです。


ゆえに、いくら口でついている!感謝します!といっていても
心の底からそれに納得できていなければ、そのギャップが自分を苦しめることになります。
ポジティブに捉えられない自分をあるがままに受け入れましょう。
無理に矯正する必要は無いのです。

あきらめない気持ち

どんな人でも考え方の癖はあります。
でも「自分はそうなのだから仕方がない」とあきらめないことです。


いわゆる「ポジティブ思考」でいるとなぜ成功できるのか?
それは物事をポジティブに捉えられるようになることで、
出来事を全て自分の糧に変えることができるからです。
どんな状況のなかでも可能性を探り、「もうダメだ」とあきらめないことが成功の秘訣です。
(成功は金銭的・社会地位的なものだけではありません。)


あきらめないということは、自分の力を信じることでもあります。
自分にもそれができるという自信を持てるようになれば、
少しずつ前向きに人生が回るようになります。


物事をネガティブに捉えることが悪いのではありません。
簡単に投げ出してしまうことが悪いのです。


気持ちを書き出して自分と向き合い、考え方のゆがみに気がつくと修正できるようになってきます。
修正できると、大きな自信に繋がります。
自信を持つと、自分を信じる力になります。
今はダメだとしても、なぜダメなのか考えましょう。
等身大の自分を受け入れることから始めましょう。