折れない心 - 牟田泰三先生の講演を聞いて

土曜日に、広島市立中央図書館主催の講演会に行ってきました。
http://www.library.city.hiroshima.jp/news/2011/04/15000631.html

講師の牟田泰三先生は、理論物理学者で、私が広島大学理学部物理学科に入学したときの学部長でした。当時私は、先生の量子力学の講義を聞くのを楽しみにしていました。(浅く表面的なことしか理解できていなかったのが悔やまれます。)私の友人は牟田先生の研究室の所属になり、直接多くを教わっていました。私はダメ学生だったのであまり先生とは接点が持てなかったです。

講演は、素粒子とは何か?から始まり、湯川秀樹先生に憧れて物理学者になったこと、湯川先生や小林・益川先生との想い出、牟田先生が1977年にアメリカのフェルミ国立加速器研究所量子色力学の精密計算をした想い出と続きました。先生の物理学者としての人生と同時に、素粒子論の歴史も振り返ることができ、素晴らしい講演でした。先生の穏やかな笑顔を見ていると、私も大学時代に戻った気分になり、とても明るい気持ちになりました。

今はどの分野(学問・技術)も進歩が著しく、最先端についていくだけでも大変、ましてやそれをリードするのはもっと大変です。誰も知らないこと、誰もやったことのないことに挑戦し続けなければ、リードできません。

先生が量子色力学の精密計算を始めた頃、ハーバード大のチームが同じテーマに挑み、互いに競争になったそうです。しかし蓋を開けると結果がそれぞれ異なり、何度計算しても原因がわからなかったそうです。ハーバード大のチームはそこで諦めたのですが、牟田先生のチームは諦めずに計算をし続け、結果が異なる原因を突き止められました。その計算によって量子色力学が実験と一致する理論である事が確かめられそうです。

「目標を立てて何かに挑むと必ず壁にあたる。そこで諦めないことで、結果を得る事ができる」という先生の言葉は、とても実感がこもっていました。私も去年一年間「諦めない」ことを肝に命じた結果、いまは体調も改善し、少しずつやりたいことができるようになっています。そのため先生の言葉がより心に沁みました。

「人生の間には何度かやり直すことがある。やりたいことがあるなら、ぜひやってみるべき。やらなければ花が開く事はない」というメッセージをいただきました。新しい事に挑戦し続けること、素直にやりたいことをやること。今の私がこういう性格になったのは、大学時代に最先端の研究者からこういう姿勢を学べたからではないかなと感じました。

これからも、折れない心を持ち続けていきます。